くらげ重工業

随想録

20180224 脱走レポ7

サークラの定例会に参加してきた。テーマは『ミソジニーについての当事者研究』とかだったと思う。ミソジニー云々の話は置いておいて率直な感想を述べると、メンヘラ、非モテ、童貞、こじらせ、アスペ等の問題を自分の問題だと思って一生懸命解こうとしている人たちの集いという印象だった。かくいう自分も言葉の定義や診断という観点ではまさにメンヘラ、非モテ、童貞、アスペの当事者なわけだが、当事者であることと当事者意識があることは違うのだろう。おれは人間をカテゴライズする言葉が原義を離れて物語性を帯び始めると、そのカテゴリーから逃げていく性質があるのだと思う。

会のあとはマハカレーというインドカレー屋で打ち上げがあった。カプリスと名乗る目の死んだ男がブロンの薬瓶を勧めてきて怖かった。みんなでワイワイしながら料理をつつくのはとても楽しかった。

20180221〜20180223 脱走レポ6

0221

所属欲求を満たしたかったので、吉田寮生に混ざってパンフレットの製本作業をした。以前、『好意を交換すると引力が働き、悪意を交換すると斥力が働く』といったことをツイートしたことがあるが、だいたい同じ話だと思う。相互にサービスを与えると引力が働き、コミュニティに所属できる。素粒子物理っぽい。

午後からはピアノの練習をしたり初音ミクを動かしたりして過ごす。栄養が偏っている感じがしていたので、晩ご飯に鯖の塩焼きと山盛りの野菜を食べた。

デザインしたリーフレットの現物がようやく手元に渡ってきた。発色はだいたい想定どおりだった。地図はもっと小さくても良かったかなと思った。


0222

昼ごろ起きたら、友人が吉野家の無料牛丼を持ってきてくれていたので、それを食べた。午後はクソアニメ(ポプテピのことではなく、本当にクソアニメ)やDokiDokiLiteratureClub!のプレイを観たり、Getting Over Itをやったり、ピアノの練習をしたりして過ごした。脱走してからデザイン依頼を数件受けていて、その後どれも進展がないのだが、とりあえずいつでも取り掛かれるようにと思い、資料を集めたりした。なんだかんだで深夜まで作業して、就寝。

20180218〜20180220 脱走レポ5

あまり書く時間を取れないので、適当に列挙していく。

  • さくら荘7号館(予定)の設立者と会った。今後の住居や生活のこととか、吉田寮ってもう負け確じゃね?みたいな話をした。
  • 吉田寮パンフレットが2ページ余っていて埋めたいと言われたので、文章を寄稿した。
  • デザインの依頼を1件ゲットした。立て看板とフリーペーパーを作る予定っぽい。
  • 藍鼠さんが作ってくれたかに玉と麻婆豆腐を食べた。とても美味かった。人権の味がした。
  • さくら荘7号館(予定)を見学した。いい感じに古びていて、おばあちゃん家のイデアみたいな物件だった。あと全体的に傾いてた。
  • 藍鼠さん熊本ラーメン(とんこつとしょうゆ)と低温調理のチャーシューを作ってごちそうしてくれた。低温調理のチャーシューは暴力の味がした。完全に柔らかくなるまで煮るのではなく、あえて硬さを残して肉感を演出したと言っていた。すごい。

20180217 脱走レポ4

マグカップのお湯に浮いているコバエの死骸をスプーンですくい出し、そのままカフェオレの素を入れて飲み干す。特に何も感じない。吉田寮生活二日目にして、衛生の基準がもう吉田寮にシフトしているようだった。一昨年に吉田寮を訪れたときにも感じたことなのだが、衛生の感覚というのは、健康や安全を保つためという面よりもむしろ、社会的な意味合いの強い観念なのではないかと思う。一般的にみて不衛生と思われるような環境でも、そこで普通に生活している一群がいて、その中に混ざって過ごしていれば、何も問題もないように思えてくるし、実際に何も問題ないことが多い。

夜になって、さくら荘1号館で2週間連続で開催されている耐久パーティー(?)に参加してきた。主催者の話だと、お金がぜんぶ無くなって破滅するか主催者が死ぬまで続けるらしい。すごい。

20180216 脱走レポ3

京都大学吉田寮の友人と連絡をとって、荷物を預けられることになったので、吉田寮に移動することにした。
いったん寮で彼と合流し、周辺のスーパーやホームセンターを案内してもらい、それから寮に戻って3日分の衣類を洗濯した。夕ごはんは、最近インターネットで話題になっている吉野家の無料牛丼を、彼のクーポンで食べさせてもらった。ありがたいことだ。やっぱり、できたてのホカホカのご飯はスーパーの半額弁当のそれよりずっと美味しい。牛肉が食べられるのも嬉しい。脱走してからお湯ばかり飲んでいたので、お茶がついてきたのも嬉しかった。夜になって、あるルートからタダで2食分ぐらいの食料をもらえたので、とりあえず明日の朝ごはんのことは考えなくてよさそうだ。

こっちに来てから、人と会話するたびに何か懐かしいような感覚が湧き起こる。文化帯によって、会話で使用可能な語彙の集合や、それに伴う会話の体系などがそれぞれ異なると思うのだが、自分が大学生だったころ使っていたそれらで会話をしているような感じがする。

20180215 脱走レポ2

思ったより疲れていたのか、かなり遅くまで寝てしまった。昼から京都大学吉田寮リーフレットのデザイン料を受け取りに、百万遍交差点に行った。それから、家に残してきた通帳の失効手続きと、念のため口座の暗証番号を変更した。案外カードと免許証だけで手続きできるじゃん、これは行けるのでは??と思い、そのままの勢いで通帳の再発行を申し込もうとしたら、「こちらでの住所がないので、新しく通帳を作っても実家に送付される」と説明され、諦めた。どこか適当な曖昧ハウスのNHK料金あたりをおれ名義で支払って、領収書をゲットできるといいのだが……。それから靴下・下着類、その他生活用品などを買い、人間と会話して、今日は終了。たくさん歩いたので足腰が痛い。自転車がほしいなぁ。

20180214 脱走レポ1

新大阪駅へ向かう新幹線の中で、おれはこれからの生活のことを考えていた。どのような場所に住むことになるのか。口座から抜いてきたお金でどのぐらいの期間生活できるのか。抽象的ではない不安に悩まされるのは久しぶりのことで、それが案外心地よくもあった。

実家を脱走した。理由は、就職したくない(細かい条件を言うと、他人の指示の下で1日4時間以上は絶対に働きたくない)、面白い人間がいそうなところに行きたい、飽きた、実家にいると死にたくなる、自分が嫌いな社会構造を再生産する気がない等といったものだ。もっと抽象的な話をすると、おれは色々なもの(一語では言い表せないので特定しないでおく。世界などが近いかもしれない)が憎いという感情をどうしても消すことができなくて、それらと和解したいと切に願っている。そして、この破滅的とも思える逃避行によってそれを達成できるという、半ば強迫じみた観念によって家を飛び出してきたわけだ。

おれを手引きしてくれている人間からインターネット越しに指示をもらい、新大阪駅から京都駅へ、そして二条駅へと向かう。彼や、彼が泊めてくれるという学森舎2とかいうシェアハウスは本当に実在するのだろうか。あるいは全てが夢、幻なのかもしれない。この京都という町も……
待ち合わせ場所に指定された二条駅西口のセブンイレブンには、顔と髪の長い男性が立っていた。なんとなく女性だと思っていたが違った。おれは文章を黙読するとき勝手に声優がつくので、よく性別を誤認する。
適当にだべりながら電車を乗り継ぎ、出町柳駅、それから学森舎2へと向かう。彼が4月に新しくオープンするシェアハウスを建てるので、入居可能になったらそこの屋根裏に住むといいかもといったことを話した。
学森舎2に着いて荷物を下ろし、周辺のスーパー等を見学して、シェアハウスでの生活についての説明を聞き、その日はお開きとなった。夜になると入居者数人が一階リビングに集まっており、そこで軽く自己紹介し、みんなで羊たちの沈黙を観て、それから寝た。