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随想録

20171209 サークラのアドベントカレンダーに参加した

サークルクラッシュ同好会のアドベントカレンダーに参加して、このような記事を書きました。

circlecrash.hatenablog.com


ところで、同じアドベントカレンダーの9日目の記事を読んでいたら、言語争奪という概念が出てきて面白かったので、紹介します。

非モテ」に限らず、多くの「自らをネガティブにとらえる言葉」、例えば「非リア」であるとか「うつ」、「ニート」、「KKO(キモくて金のないオッサン)」などは最初の意味に比べて、徐々に人口に膾炙していくにつれ、意味が拡大していくきらいがあります(私はこれを言語争奪 word captureと呼んでいます)。

「読むと絶対モテる記事」と拗らせ概論、さえも - サークルクラッシュ同好会ブログ

 

つまり、こういうことです。「非リア / リア充」という言葉ははじめ、「友達のいない我々(内集団)」と「大学生活を楽しんでるあいつら(外集団)」の間に線を引く役割をもっていたはずです。この線を引くことにより、同じスレの中にいる人たちはある種の連帯感(デュルケームに言わせれば共通の絆でしょうか)が生まれますし、彼らはアイデンティティを得ることができます(ここでいうアイデンティティとは「自分はこういうものだ」という定義付けとでも思ってください、そしてそういうものの存在は多くの場合、精神の安寧をもたらします)。

「読むと絶対モテる記事」と拗らせ概論、さえも - サークルクラッシュ同好会ブログ

 

(※以下、『呪詛・物語・社会』を前提として話を続けます。)
ここで例として挙げられている『非リア / リア充非モテ、うつ、ニート、KKO、その他「自らをネガティブにとらえる言葉」』はどれも、物語るという行為において、とても便利に使える語彙だと思います。「同じスレの中にいる人たちはある種の連帯感(デュルケームに言わせれば共通の絆でしょうか)が生まれます」というのは、同じスレの人たちで一つの物語を共有している状態とも言えます。


アドベントカレンダーの記事で私は、物語を書く者が強者であるということ、物語は物語中のオブジェクトに意味を提供するということを主張しました。それらはつまり、意味を上書きする者が強者であるということを意味します。なので、言葉の意味を上書きする行為は、典型的な強者の行為だと思うのです。「最初の意味に比べて、徐々に人口に膾炙していくにつれ、意味が拡大していくきらいがあります」とありますが、このような意味の拡大は、みんなが強者になろうとして、あちこちで同時多発的に言葉の意味を(自分たちに都合の良いように)上書きすることで、起こるのではないでしょうか。

 

言葉の意味が上書きされる仕組みについては、また物語概念と関連付けて、そのうち記事を書こうと思います。(そのうちがいつなのかについては諸説あります……。)
概要だけを書くと、言葉の意味の上書きは、その言葉の便利な使い方がキャラクターに示され、一定の同意を得たとき、その後から新しく意味がついてくるという形で起こります。このような仕組みは、言葉に限ったことではなく、物語中のあらゆるオブジェクトの意味は、オブジェクトの使われ方によって規定されています。使い方は意味に先立つのです。