くらげ重工業

随想録

20180214 脱走レポ1

新大阪駅へ向かう新幹線の中で、おれはこれからの生活のことを考えていた。どのような場所に住むことになるのか。口座から抜いてきたお金でどのぐらいの期間生活できるのか。抽象的ではない不安に悩まされるのは久しぶりのことで、それが案外心地よくもあった。

実家を脱走した。理由は、就職したくない(細かい条件を言うと、他人の指示の下で1日4時間以上は絶対に働きたくない)、面白い人間がいそうなところに行きたい、飽きた、実家にいると死にたくなる、自分が嫌いな社会構造を再生産する気がない等といったものだ。もっと抽象的な話をすると、おれは色々なもの(一語では言い表せないので特定しないでおく。世界などが近いかもしれない)が憎いという感情をどうしても消すことができなくて、それらと和解したいと切に願っている。そして、この破滅的とも思える逃避行によってそれを達成できるという、半ば強迫じみた観念によって家を飛び出してきたわけだ。

おれを手引きしてくれている人間からインターネット越しに指示をもらい、新大阪駅から京都駅へ、そして二条駅へと向かう。彼や、彼が泊めてくれるという学森舎2とかいうシェアハウスは本当に実在するのだろうか。あるいは全てが夢、幻なのかもしれない。この京都という町も……
待ち合わせ場所に指定された二条駅西口のセブンイレブンには、顔と髪の長い男性が立っていた。なんとなく女性だと思っていたが違った。おれは文章を黙読するとき勝手に声優がつくので、よく性別を誤認する。
適当にだべりながら電車を乗り継ぎ、出町柳駅、それから学森舎2へと向かう。彼が4月に新しくオープンするシェアハウスを建てるので、入居可能になったらそこの屋根裏に住むといいかもといったことを話した。
学森舎2に着いて荷物を下ろし、周辺のスーパー等を見学して、シェアハウスでの生活についての説明を聞き、その日はお開きとなった。夜になると入居者数人が一階リビングに集まっており、そこで軽く自己紹介し、みんなで羊たちの沈黙を観て、それから寝た。